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中国に関する知識

8-1-1 中国共産党の仕組み.

中国での唯一の政党です。憲法には「中国は共産党が指導する」と規定されていますので、「中国」という国家組織の上部概念として中国共産党が存在することになります。
 中国共産党はピラミッド構造をしていて、中国にあるあらゆる組織に、共産党の支部や出先機関を配置しています。共産主義以外の考えを持つことはご法度なので、共産党を支持する思想教育を徹底させるのが目的です。しかしながら、1992年以降は、「市場社会主義」という正体不明の概念を持ち出してきていますので、共産主義思想を教育するのではなく、共産党に反対することは悪いことであると教育するといった方がわかりやすいでしょう。
 つまり、思想そのものにはそんなに厳しい締め付けはないといえます。そして、共産党員になることは、思想的に共産主義を理解しているというより、組織や社会の中で尊敬される「良い人」的意味合いを持っています。

中国での唯一の政党です。憲法には「中国は共産党が指導する」と規定されていますので、「中国」という国家組織の上部概念として中国共産党が存在することになります。
 中国共産党はピラミッド構造をしていて、中国にあるあらゆる組織に、共産党の支部や出先機関を配置しています。共産主義以外の考えを持つことはご法度なので、共産党を支持する思想教育を徹底させるのが目的です。しかしながら、1992年以降は、「市場社会主義」という正体不明の概念を持ち出してきていますので、共産主義思想を教育するのではなく、共産党に反対することは悪いことであると教育するといった方がわかりやすいでしょう。
 つまり、思想そのものにはそんなに厳しい締め付けはないといえます。そして、共産党員になることは、思想的に共産主義を理解しているというより、組織や社会の中で尊敬される「良い人」的意味合いを持っています。

中国共産党は、5年に1回のペースで全国代表大会を開いて、重要事項の審議、党規約の改正、中央委員会報告、ならびに、中央委員の選出を行います。2002年の11月に16回目の党大会が開催され、16期目の中央委員が選出されました。
 全国代表大会の決議は中央委員会が執行します。中央委員会は年一回のペースで、中央委員会総会を開き、重要政策の方針を確認します。中央委員会総会は「中全会」といわれます。例えば、第10期の3回目の中央委員会総会は、第10期3中全会というように略称されます。
 中央委員の中でも、政治局員の会議である政治局会議の権威は絶大で、中国の重要事項の決定は、人事をふくめてここで行われます。ただ、軍(中国では人民解放軍といいます)の組織は、政治局とは別扱いというまことに奇妙な政治形態です。
 アメリカなど先進国の軍隊は、内閣の下部組織であり、その司令官は、国防長官であり、最高司令官は大統領です。つまり、軍隊が政府と対立することなどありえない「シビリアンコントロール」が効いています。しかし、中国では、中央軍事委員会という軍事組織が、中央委員会から、政治局とは別に、政治局と対等な組織として選出されます。つまり、共産党の中で、政治と軍事は対等な関係にあるわけです。
 ところが一方で、後から述べるように国務院という日本での内閣に相当する組織があり、その中の国防部という組織があります。人民解放軍はその指導も受けることになっていて、一体どうなっているのかわからないというのが正直なところです。つまり、人民解放軍は、共産党の軍隊でもあり、中国政府の軍隊でもあります。

中国共産党が日本での自由民主党にあたるとすれば、中国の「国務院」が日本での内閣にあたります。日本での国会にあたるものが、「全国人民代表大会」で、国務院は全国人民代表大会に責任を負っています。国務院は、国家としての行政機関なのですが、上で述べたように、これとは別に共産党の統治機構がオーバーラップしているというのが、中国政府のわかりにくさです。
 国務院の長は、日本と同じように、「総理」と呼ばれます。その下に、副総理、国務委員(副総理のようなもの)がいます。日本での省に相当するものが「部」と「委員会」で、それぞれの長が日本での大臣に相当します。
 国務院の役割は次の4つです。
1) 法律に基づいて行政措置を行うこと
2) 全国人民代表大会に議案を提出すること
3) 各部と各委員会を指導すること
4) 経済計画と予算を編成し、執行すること中国の省は、きわめて詳細な縦割りで、かつては40もの部と委員会がありました。しかし、これではあまりに縦割りというので、1998年の全国人民代表大会で、29の部と委員会に再編されました。
 さらに、2003年の全国人民代表大会では、「国家経済貿易委員会」と「対外貿易経済合作部」が合併し「商務部」となりました。これで、現在は28の部と委員会になっています。従来は、対外貿易と直接投資の窓口が複数あり、外の人間には何が何だかわからなかったのをWTOへの加盟にあわせ、一本化しました。

8-1-3 全国人民代表大会
 「国家機構」の最高権力機関ということになっています。日本での国会にあたりますが、欧米や日本の議会が2院制の制度であるのに対して、中国の「全国人民代表大会」は1院制です。
 全国人民代表大会メンバー数は2,985人という膨大なもので、各省・直轄市・自治区の代表おおよび、軍の代表という形になっています。全人民の代表ですから、少数民族や非共産党員も含まれています。とはいえ、約70%が共産党員ですので、人民代表大会での結論と共産党大会での結論が食い違うといった事態はないように設計されています。
 任期は5年で、新中国建国以来、10期の人民代表が選ばれています。代表大会は一年に一回春に、北京の人民大会堂で開催されます。10期目は2003年から2008年までです。
図8-5 全国人民代表大会のしくみ 出所) 稲垣清「図解 中国のしくみ」中経出版、45ページ全国人民代表大会の仕事は、憲法を含む法律の制定、国家主席と国務院総理の選出、国家経済計画と予算の承認などです。国家主席というのは国の代表(元首)ということになっていますが、空席であった時代もあるなど、実際には何もすることのない名誉職的なポストです。
 全国人民代表大会そのものには「議案」の提出権はありません。議案は共産党か国務院から出されます。また、全国人民代表大会には、議案や予算の否決権もないのだろうというのが現実のところです。したがって、かつては、共産党や国務院から提出された「議案」をそのまま満場一致で可決するだけの「ゴム印会議」などと冷やかされていました。
 しかし、近年の自由化の影響もあって、一定の反対票が投じられるようになりました。とくに、人事案件では共産党内の路線の対立が投票行動にも現れるようになっていますし、検察の汚職摘発に関する報告では、取り締まり強化を促す反対票が多くなっています。
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8-1-4 司法の仕組み
 欧米・日本などの先進各国では、立法・司法・行政の3権力がその度合いはことなるものの、一定の独立性を持っていますが、中国では、全国人民代表会議の下に位置づけられている。つまり、共産党の指導の下にあるわけです。
 日本の裁判所にあたるのが「人民法院」、日本の検察庁にあたるのが「人民検察院」です。組織的には、裁判所なら、最高人民法院、高級人民法院、中級人民法院、とランクがあるのですが、これらは、それぞれの議会(つまり、共産党組織)に対応しているだけで、欧米・日本のように裁判の上訴に対応しているものではありません。実際、中国の裁判制度は2審制をとっているとはいうものの、事実上の1審制です。というのは、2回裁判を行っても、判決が覆ることはありませんし、場合によっては、1回目の裁判で刑が確定し執行される場合すらあります。そして、死刑の執行はしばしば公開で行われ、刑罰には「見せしめ」的要素が色濃く残っています。
図8-6 司法組織 出所) 稲垣清「図解 中国のしくみ」中経出版、51ページ旧聞に属するかもしれませんが、毛沢東の死後に、毛沢東の妻であった紅青をはじめとする文革4人組が逮捕されました。当時、中国には死刑はなかったのですが、あわてて死刑をつくり、彼らに死刑の判決を下しました。しかし、外国から非難され、共産党の指導部も気がとがめたのか、特赦として罪一等を減じ、終身刑にしたという、訳のわから事件がありました。
 中国はしばしが「法治国家」ではなく「人治国家」であると言われます。中国の人にその理由の説明を求めれば、「中国は広大でいろんな民族もいるので、画一的は法律で規定するのは無理だから」とか「共産党の指導が、個人のあるいは短期的な利益よりも、社会的なあるいは長期的利益を優先させ場合があるから」と答えます。しかしながら、「人治国家」の本音の部分は、裁量政治・ご都合主義による政治を許し、汚職と腐敗の温床になっていることは、誰もが認めるところです。
 近年では、中国が国際社会の仲間入りをするために「法治国家」を目指しているとはいえ、中国では、ようやく「司法試験」制度が開始されたばかりです。つまり、これまでは、裁判官や検察官が、法律の専門家ではなく、共産党から任命される「役人」だったわけです。一方弁護士も、国務院の司法部の法律顧問処に属しますので、日本のように民間人ではなく公務員ということになります。
 こうした制度化では、公正な裁判が期待できるわけがなく、特に地方に行くと、きわめていい加減な裁判が続いているようです。
 ただ、上で述べたように、中国を近代化するためには裁判制度を整備するのは急務と考える指導者も多く、政府は司法試験制度を立ち上げたり、各級の検察院は「反汚職・収賄工作院」を設けたりするなど、司法改革の兆しが見え始めています。
 また、中国経済が国際化するにしたがって、中国企業と外国企業との間の経済紛争が増加しているのですが、中国の裁判制度では、外国企業の勝ち目は全くないとされていました。いまでも、その傾向は変わらないのですが、裁判になる前に、企業間で紛争を解決できるように、外国企業が中国国内での外国人弁護士事務所の開設を要望していました。中国のWTO加盟を機に、中国国内でも、外国人弁護士事務所の開設が認められるようになってきたのも朗報のひとつです。
8-1-5 人民解放軍の仕組み
 人民解放軍は、もともとは、革命のために、中国共産党が組織したものですので、その位置づけが複雑なものなっています。
図8-7 軍機関の組織図 出所) 稲垣清「図解 中国のしくみ」中経出版、55ページ人民解放軍を統帥する「国家中央軍事委員会」と「共産党中央軍事委員会」のメンバーは同じです。つまり、同じ組織に2つの看板をかけたようになっています。
 人民解放軍は「総参謀部」「総政治部」「総後援部」「総装備部」の総部があります。
総参謀部: 作戦指揮、軍事訓練、装備計画
総政治部: 軍内部での政治思想教育、共産党の出先機関
総後援部: 兵站部門
総装備部: 兵器・装備の配備人民解放軍には、北京、瀋陽、南京、済南、広州、成都、蘭州の7つの大軍区があり、その下に26の省級軍区があります。
 軍隊の規模は、2000年の推定値で、約300万人という膨大な規模です。内訳は陸軍が230万人とそのほとんどを占め、海軍26万人、空軍47万人と推定されています。またこれとは別に、第2砲兵部隊といわれる戦略ミサイル部隊があります。
 対アメリカや対ロシアとの軍事的緊張が弱まった今、人民解放軍の存在意義が問われています。もはや、これほどの大きな軍事力を維持するだけの対外緊張がありません。また、1989年の天安門事件では、民主化運動の学生を弾圧し、強い批判にさらされました。国民を守るはずの軍隊が国民に銃口を向けましたからです。いまだ、人民解放軍への敬意が回復されたとはいえない状況です。中国政府の財政難も人民解放軍の士気を下げています。装備は旧式化するし、兵士の賃金も低い水準で抑えられています。
 旧共産国では共通の問題なのですが、中国でも先進国に比較して大きな組織になっている軍事部門(つまり、非生産部門)の整理・縮小が産業社会への脱皮が大きな課題です。

8-2-1 中国の民族
 中国は漢民族が中心で90%を占めますが、残りの10%は55の少数民族からなる多民族国家です。
 少数民族が集中している地区は、その民族の名前をつけた行政区があります。
【省レベル】
 新疆ウイグル自治区(ウイグル族)、内蒙古自治区(蒙古族)
 広西チワン族自治区(チワン族)、チベット自治区(チベット族)
 寧夏回族自治区(回族)【地区レベル】
 延辺朝鮮族自治州(朝鮮族、吉林省)など23
【県レベル】
 孟村回族自治県(回族、河北省)など68
 言うまでもないことですが、少数民族にも漢民族と同等の権利が与えられています。人民代表大会にも少数民族の枠が確保されています。ただ、各自治区の行政府の長官には各民族出身者が就くものの、共産党の書記は漢民族が就くことになっています。
 蒙古やチベットでは民族対立が激しく、今後の動向が注目されるところです。ロシアではチェチェンが泥沼の抗争を繰り広げていることを鑑みれば、中国も民族問題の扱いには慎重にならざるをえないというところです。
 中国では、文革前は、憲法で信仰の自由が保障されていましたが、文革期には事実上信仰の自由がなくなりました。ところが、文革以降は再び宗教活動の自由が復活しました。少数民族が多数存在するので、宗教もたくさんあります。
【漢民族】
 仏教、プロテスタント、カトリック、道教などを信仰しています。
 道教は、漢民族から生まれた民間宗教です。日本でいえば神道に相当する民族固有の宗教です。いまでは信仰するという感じのもではありません。
 仏教は1世紀ごろインドより伝来します。唐の時代から本格的に発展します。天台宗、禅宗、華厳宗、浄土宗といった日本に伝来した中国流の教派が生まれました。
 カトリックは16世紀ごろ、プロテスタントはアヘン戦争以降、外国人宣教師の活動で普及しました。キリスト教は中国では少数派ですが、近年は増加傾向にあります。
【ウイグル、カザフ、キルギス、ウズベク】
 主にイスラム教を信仰しています。
 7世紀半ばに、アラビアやペルシャの商人から現在の中国の西北と東南に伝えられました。13世紀になると、モンゴルの軍隊の移動とともに、アラビアやペルシャの商人が中国の各地に広く活動するようになり、イスラム教が中国各地に広く伝播しました。
 現在、イスラム教徒は1600万人に達するといわれています。
 最近の宗教の話題といえば、2000年の「法輪功事件」でしょう。法輪功は自己鍛錬法という側面もあり、宗教かどうかは意見が分かれるのですが、そのグループの行動がオカルト集団的だったので、中国政府は「邪教」として禁止しました。しかし、これに抗議する形で、法輪功の信者が北京の共産党本部を取り囲むという事件が起こりました。これを法輪功事件といいます。
 国政府は、表向きは宗教の自由は保障しているものの、宗教の影に隠れての共産党批判は許さないという立場です。そもそも宗教には、現状に対する不満、批判などと表裏一体になっているケースがあり、共産党の今後の対応が注目されています。▲ページのトップ


8-2-2 教育の仕組み
 中国の教育は、日本と同じように、6,3,3,4年のシステムがとられています。ただ、それぞれの段階の名前が少しだけ違います。

表8-1 教育制度と学校数
学校等級 種類 学年 数 特徴
初等教育 小学校 6年 491,273 義務教育・学費免除・雑費徴収
中等教育 初級中学(中学校) 3年 65,525
高級中学(高校) 3年 14,907 入学試験で選抜・学費および雑費徴収
私立高校 3年 -
専門高校 3年 3,260
高等教育 大学 4年 1,225 入学試験で選抜・学費および雑費徴収
 総合大学 4年 (91)
 医学専門大学 5年 (96)
 理工学部 5年 (231)
注) (1)カッコ内は内数 (2)学校数は2001年現在

日本の小学校にあたる学校は「小学」とよばれ、これはほとんど同じなのですが、日本の中学校と高等学校をあわせて、中国では「中学」とよんでいます。中国の「中学」の前半3年を「初級中学」、後半3年を「高級中学」とよびます。中国では、初級中学までが義務教育となっていて、学費は国費で負担されます。高級中学以降は、義務教育ではなく、入試があり学費も徴収されます。この制度は、欧米・日本の制度と同じであり、政治的には敵対する資本主義国ではありながら、制度の一部を模倣するあたりは、中国人の柔軟性が伺えます。
 大学は中国全国に1,225あります。日本では大学数が約600であることと、日中の人口規模の差を考えると、中国では大学進学が相当の難関であることがわかると思います。
 中国の大学はすべて国立大学なのですが、かつては、中国国務院の部(日本の省庁)に対応して作られていました。医学大学、財経大学、師範大学など、専門大学が多いのはそのためです。そしてその卒業学生は、その専門に応じて、就職口を「配給される」という制度だったのですが、最近は、職業選択の自由の幅が増えているようです。
 近年の機構改革で、大学は教育部の主管に一元化されました。大学には91の総合大学という大規模大学があります。その中でも30が重点大学に指定されていて、研究や行政官養成の中心大学になっています。重点大学には北京の北京大学、清華大学、人民大学、上海の福旦大学、交通大学などが含まれます。また、中国のイメージからは以外かもしれませんが、理工系の教育機関が多いという特徴があります。
 大学の入試は、日本のように、センター試験と各大学の独自試験の2段階ではなく、アメリカのように1段階の共通試験によって決まります。しかも、アメリカのように「参考資料」として用いられるのではなく、その試験の得点がそのまま大学選択につながります。中国でもいわゆる「名門大学」が存在し、将来のキャリアに有利になるため、名門大学へ進学するための受験戦争が社会問題化しています。
 一方で、義務教育の破綻が別の社会問題になっています。義務教育の学費自体は無料なのですが、学校を運営する行政主体が様々な「雑費」を徴収します。その負担のために、子供を学校に通わせられない、貧困層が存在するためです。
 日本や先進国では、国民の選挙によって政治家を選びますので、政治家はその人気が重要ポイントになるのですが、学歴はそれほど大きなファクターではないかもしれません。しかし、中国では、共産党の党員が官僚を組織し、そのリーダーが政治家として輩出されますので、おのずと中国の指導者層には高学歴者が多くなります。かつては、革命戦争に参加した軍人あがりが多かった、第一世代、第二世代の指導者とは様変わりです。2002年の11月の党大会で選出された356人の中央委員の98%が大学卒です。修士以上が30名、博士号取得者が8名という高学歴でした。欧米への留学経験者も10名います。
 また、現在の中国では留学熱が盛んなのも特徴です。中国のIT産業や外資系企業が、留学からの帰国者を優遇するためです。それとともに、教育の質は欧米の方が上であるという認識があるのだと思います。韓国や台湾では、アメリカでの教育経験があることが、政治家としてもアカデミックでも、とても有利になります。中国では、留学帰国者を「海帰派」と呼ぶのですが、近い将来、中国政府の要職の多数を海帰派が占めるようになるかもしれません。
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8-2-3 戸籍の仕組み
 中国では、戸籍は独特の意味を持っています。
 日本では、移動の自由が認められていますので、戸籍はどこで生まれたかを示すのみで、現実生活では住民票の方が意味を持ちます。一方、中国では、1961年に戸籍制度が強化されて以来、戸籍がなければ、食糧の配給も受けられないし、教育も受けられないことになりました。また、原則的に戸籍の移動ができません。そして、戸籍には農村戸籍と都市戸籍があり、農村から都市への移動は、特に厳格に制限されています。
 ただ、改革開放政策によって、経済特区が建設されると戸籍管理の状況が少し変わってきます。経済特区とは、外資に恩典を与えて誘致するために、都市部の郊外に建設された工業地域です。中国は経済特区の外資を梃子に、工業化を推し進めようとしますが、工場を建設するには労働力が必要です。そこで、経済特区では、数年の期限付きですが、農村住民が都市戸籍を得ること(都市で働くこと)ができるようになりました。
 また最近は、経済特区でなくても、北京や上海では、合法非合法の農村労働者が増加しています。彼らは「農民工」と呼ばれています。農民工のなかには「暫定都市戸籍」を取得している者もいるのですが、非合法で流動して者もいます。すでに都市部の経済は、ある意味で農村からの労働者に依存しないことには成立しなくなっているので、いかに都市部を人口増加に耐えるような構造にしてゆくことがこれからの中国の課題です。

計画期の中国では、傘下の国営企業を通じて地方政府が集めた資金を中央政府へ全額上納し、それを再び中央政府の指令によって地方政府が支出するという仕組みになっていました。ですから日本のような「銀行」という概念は乏しく、いわば財政と金融が渾然一体化していたと言ってよいでしょう。改革・開放後ではこうした計画経済の仕組みが大きく変貌し、従来財政が担当していた機能の一部が金融システムへ移管されました。同時に財政の仕組みもかなりの程度分権化されています。この章ではこれまで部分的にしか説明してこなかった改革・開放後中国の財政と金融の仕組みおよびその問題点を概説します。なお、中国の制度は日進月歩ですので、この章の記述もやがて時代遅れになることに注意して下さい。
8-3-1 中国の行政機構
 中国の財政を知る第一歩は中国の行政機構を知ることです。そこで最初に中国の行政機構について簡単に説明しておきましょう(図8-8)。

図8-8 中国の行政機構 注1) 中国では台湾を「台湾省」と位置付けている。また香港・マカオは特別行政区であり、ここでは省略されている。
注2) 市轄区とは市の下の行政区画で、市が管轄するものの県と同格に位置付けられている。「街道」とは区の派出機構である。
出所) 国家統計局「中国統計年鑑」2002年、稲垣清「2時間でわかる図解 中国のしくみ」中経出版、2003年。日本の行政機構は「国」と「県」、その下の「市町村」からなっていることはよく知られています。そして国を「中央政府」、県以下の行政機構を「地方政府」と言います。これと同じで、中国の行政機構は首都北京にある「中央政府」とその他の「地方政府」からなり、中央政府を統括する行政府が日本の内閣に相当する「国務院」です。ちなみに日本では首相のことを「内閣総理大臣」と言いますが、中国では「国務院総理」と言います。現在の国務院総理は温家宝(Wen Jiabao)です。
 地方政府の中身は(1)27省・4直轄都市からなる省政府、(2)その下の地区級市政府(265市)、(3)その下の県および県クラスの市政府(2053県、うち県級市は393)、(4)さらにその下の郷・鎮政府です(図8-8)。ここで「鎮」とは県政庁所在地もしくは農村部のなかで比較的商工業の発達した町、「郷」とは農村集落という意味です。「省」に対応する行政区画は日本にありませんが、最小の青海省(523万人)から最大の河南省(9555万人)とわれわれの感覚で言えば「国」であり、強いて言えばアメリカの州というイメージです。また、地方政府の中心行政機構は人口30-50万人単位の「県レベル」と考えてよいでしょう。そして北京政府の財政が「中央財政」、省レベル以下の財政が「地方財政」です。なお、データの都合上、以下では省レベルで地方財政を代理します。
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8-3-2 中国の国家財政
a. 中央と地方
 次に、中国の国家財政の特徴を簡単に説明します(表8-2)。

1―中国の公的医療保険制度とは?

中国の公的医療保険制度は、2020年までに「皆保険」の実現を目指している。都市部の国有企業を対象とした医療保険が1951年に導入されて以来、中国はおよそ70年をかけて制度を整えることになる。

「皆保険」の定義も、全ての国民が何らかの医療保険に加入できる制度を構築することは日本と同義であるが、中国の場合は加入には強制と任意が並存している点が大きな特徴である。

中国の公的医療保険制度は、本人の戸籍(都市/農村)や、就業の有無によって、大 きく2つに分類される。都市で働く会社員などの被用者は「都市職工基本医療保険」 に加入(強制)し、都市の非就労者や農村住民は「都市・農村住民基本医療保険」に 加入(任意)する[図表1]。

一方、保険料の徴収、財政(基金)の管理、給付内容の決定や改定といった実質的な 制度の運営は各地域で分立して行い、それぞれ設置された社会保険管理機構が担う。以下では、北京市の都市職工基本医療保険を例に、(1)保険料負担、(2)制度構造、(3)入院・通院給付に分けて解説する。ただし、地域毎に制度内容が異なる点に留意が必要である。

2―都市職工基本医療保険制度 ー北京市を例に

1|保険料負担
都市職工基本医療保険の対象者は、都市で働く会社員、自営業者、公務員・外郭 団体職員等である。

保険料は労使折半ではなく、企業の負担が重い設定となっている。北京市の在職者 を例にみると、雇用主は、基本医療保険料の9%と、高額医療費用互助保険料の1% で合計10%を負担する[図表2]。従業員は、基本医療保険料の2%と、高額医療費用互助保険料として3元負担する。これらの保険料は、北京市の「基本医療保険基金」、「高額医療費用互助保険基金」と、本人の「医療保険専用の個人口座」で積み立てられる。

雇用主が拠出した基本医療保険料9%のうち、従業員の年齢に応じて決められた割合0.8~2%と、従業員が拠出した2%が医療専用の個人口座に積み立てられる。雇用主が拠出した残りの基本医療保険料の7~8.2%は基本医療保険基金に積み立てられる。雇用主が拠出した高額医療費用互助保険料の1%と、従業員が拠出した3元が高 額医療費用互助保険基金に積み立てられる

制度の構造は2階建てとなっている。北京市の在職者の場合、1階部分の基本医療保険からは一定額まで基礎的な給付が受けられる。これを上回る高額な医療費については、2階部分の高額医療費用互助保険から給付が受けられる[図表3]。

3|入院・通院給付
給付は、基本的に、入院、通院(一般的な通院外来、市が指定した特殊疾病・慢性病)を対象としている。給付は日本とは異なり、受診した医療機関の規模やランク、医療費の多寡などに基づいて各地域が設定している。北京市の在職者の場合、入院費はまず、年間1,300元までが全額自己負担となる[図表4]。1,300元を超えた場合、10万元までは病院のランク、入院費の多寡に応じて、3~15%が自己負担となっている。

万元までは自己負担が一律15%となっている。なお、30万元を超える入院費は全額自己負担となる。例えば、3級病院(日本の大学病院に相当)に入院した場合、医療費1,300元超から3万元の部分については自己負担割合が15%、3万元超~4万元の部分については自己負担割合が10%となっており、医療費が高額になるにつれ、自己負担割合は軽減されている。一方、一つランクが下の2級病院の場合は、同じ医療費でも自己負担割合は13%、8%と、3級病院よりも軽減されていることがわかる。

これは、大規模病院への患者の集中を避けるための策である。また、政府が国民 に保障する医療サービスは基本的なものに留め、よりレベルの高い医療サービスを受けるには、それに見合った対価を受益者自身が支払うべきという考え方がある。

方、通院(一般外来)で治療した場合、1,800元までは全額自己負担でる。各居住地域に設置された小規模な医療機関である社区衛生サービスセンター(1級病院に相当)での自己負担割合は10%であるが、自身が選択した1~3級の医療機関 で受診する場合は30%となっている[図表5]。なお、通院についても大規模病院へ の集中を避けるため、最初に受診する医療機関は、社区衛生サービスセンターにするよう求めている。

また、北京市は特殊疾病の通院治療の対象として、(1)悪性腫瘍、(2)人工透析(腎不全)、(3)血友病、(4)再生不良性貧血、(5)腎臓、肝臓、心臓、肺移植後の拒絶反応の投薬治療、(6)多発性硬化症、(7)加齢黄斑変性症(注射治療)の7種を指定している。これらの治療は医療費の負担が重いことから、通院(一般外来)を対象とした自己負担ではなく、より負担が軽い入院の自己負担割合が適用されている。ただし、特殊疾病の給付を受けるには申請が必要である。

なお、一般外来の薬代は、個人口座(医療保険カード)から支払うこともできる。

給付対象者は、被保険者本人が対象となり、日本のような被保険者に扶養されている家族への保険給付はないため、扶養家族はそれぞれ都市・農村住民基本医療保険に加入し、給付を受けることになる。

制度は各市で運営されているため、基本的に管轄の市以外で受診した場合は、全額 自己負担となる。ただし、かかった医療費が過重なものとならないように、管轄地域で、一部の医療費の償還も可能となっている。

受診する医療機関についても、通常使用する病院を予め4ヶ所指定する必要がある。また、4ヶ所以外に、A類病院(北京市が指定した大規模な総合病院)、漢方などの専門病院については、指定をしなくても利用が可能である。但し、上掲以外の病院で受診した場合は医療給付の対象とならない。

3―日本とは大きく異なる制度設計

中国では、日本の公的医療保険の特徴の1つである、患者が望めば、いつでも、誰でも、どこの医療機関でも医療を受けられる「フリーアクセス」は存在しない。加えて、制度の運営が各地域で分立していることから、保険料負担、給付限度額、入院・通院に際しての自己負担割合の設定は各地域で全く異なっている。

中国の医療保険制度を理解する上では、これらの内容を地域単位で確認する必要があり、この点が制度の分かりにくさを助長していると考えられる。「中国の医療保険制度は整備されていない」と考えられる向きも強いが、給付に際しての限度額の設定、免責制の導入など、負担に見合った給付のあり方を実現しようとしており、医療財政といった視点からもより現実的な制度設計になっているとも考えられよう。

中国の不動産税、2020年に導入か

日本では当たり前のようにある固定資産税だが、中国には固定資産税は特に設けられていない。

しかし、今後不動産税として取り組む考えであることを、中国当局が明らかにしたのである。

財政相の肖捷氏は、中国共産党気管支・人民日報にて、「2019年までに不動産税導入への手続きを行い、2020年での導入を目指す」としている。

今まで検討や不動産税の実験的導入などは行われてきたが、今回具体的な年数が出たのは土地売却益の代わりを立てるためだと予測されている。

中国には独自の土地国有制度があり、地方政府は土地を不動産会社に売却することによって財源を得ている。

この財源は地方政府にとって大きな財源の一つだ。

80年代後半から初めて土地の競売が行われてからは、地方政府は土地売却によって得られる財源に頼ってきていた。

しかし、都市化が進行すると供給量も減少し、中小都市になると価格が下落してきているため、土地売却による財源が破綻するリスクが徐々に高まってきているのだ。

中国当局は土地売却の代わりに得られる税源として不動産税の導入を検討している。

ただ、中には習近平国家主席が各省庁に対して権力移管を行っていることも影響していることも懸念されている。

批判必至な不動産税導入

不動産税の導入に関しては、不動産所有者からの批判は必至と言えるだろう。

2011年に行われた上海市・重慶市での試験的不動産税の導入は、不動産平均価格の下落を招いたという調査結果が報告されている。

それにより万が一、中国全土で不動産税の導入が開始された場合、住宅価格は1割減少すると言われているのだ。

この減少は不動産だけに留まらず、様々な分野での景気悪化を招きかねない。

中国は現在国内総生産成長率の4分の1が不動産関連となっているため、全体の景気が影響されやすい状況にあるのだ。

また、中国の場合土地は全て国が所有しているものであり、もしも土地・住宅を購入したい場合でも個人の所有は認められていない。

国から70年分の使用権を購入する形となるので自分の土地になることはないのだ。

その上で不動産税も支払わなくてはならないとなると、不動産を所有している人にとっては大きな痛手となってしまうだろう。

このような批判必至な状況から数年間議論に上がることはなかった不動産税だが、今再び議論対象となったのは、やはり習近平氏による権力移管が影響していると言えるだろう。

2020年を目標に導入を検討していると最初に説明したが、実際は2019年に法案成立の運びとなる可能性も十分に考えられる。

2018年の中国政府は不動産関連に対しどう動くのか

2019年から2020年での不動産税の導入が検討されていると紹介してきたが、不動産関連について他にも様々な動きが2018年から起きる。

例えば、中国に住宅政策において、投機的売買は抑制し、初回住宅購入者の増加を目指すためのサポートを重視するとしているのだ。

また、賃貸市場でも国有の賃貸会社設立を目指す意向を示している。

上海などの主要都市では、人口増加における住宅価格の急騰なども相次いでいる。

上海市は2017~2035年の基本計画の中で、2035年までに上海市居住者数を約2500万人までに制限し、建設用地も3200平方km以上を超えないとしている。

これらの動きは今膨れ上がっている中国の不動産バブル崩壊を防ぐための対策であり、中国当局はバブル崩壊に対し強い懸念を抱いていることがわかる。

2018年からは特に投機的売買の抑制が強まると推測される。

不動産税の導入検討も含め、不動産バブル崩壊を抑えようと様々な取り組みを実施する中国当局に翻弄されるのは不動産所有者達と言っても過言ではない。今後どのような動きがみられるのだろうか